そろそろバスケ漫画にまつわる問題について一言言っておくか

最近いろいろなバスケ漫画が出てますね

私は普段からNBAを見てるバスケファンなのですが、バスケ漫画もちょくちょくチェックしています。ストリートバスケを題材にしてたり、女バス漫画なんかも出てきたり……。その中でも、黒子のバスケは最近アニメ化したこともあり、凄い人気がありますね〜。最初はトンデモバスケ漫画だと敬遠してたんですけど、読んでみるとなかなか面白い。バスケ愛好家の中にはバスケをバカにしてると言う人も少なくないですけどね。やっぱりバトル描写(あえてバスケ描写とは書かないw)が読んでてスカッ!とする漫画の方が良いですね。

さて、そんな黒子のバスケの中で読んでてちょっと気になった表現が…。


フルドライブ……って何ぞや?

fulldrive

フルドライブっていう技が出てくるんですが。


ドライブって言葉は存在します。ドリブルでゴールに向かってアタックすることです。ペネトレイトと言ったり、日本ではカットインと言ったりする人もいます。じゃあ、フルドライブは……? フルって言うわけだからたぶん、全力でドライブするとか、最高速でドライブするとかそんなイメージがあるんじゃないかなと思います。ただ、バスケでこういう言葉が使われているのを聞いたことがありません。造語なんだと思います。


造語と言えば、黒子のバスケでは多種多様な「必殺技」が出てきます。例えば、視線誘導と低い姿勢のドリブルを組み合わせ、視界から消えるドライブ、「バニッシングドライブ」とか。で、「バニッシングドライブ」とかほのかに中二的香りのする単語だと、ああ、これは現実には無い漫画の世界の中の「必殺技」なんだなと思います。でも、先ほどの「フルドライブ」だと、本当に存在する言葉なのか、造語なのか判断しにくいところです。しかも、フルドライブの後にでてくる「フェイダウェイ」は実在する技なのでなおさら混乱してしまいます。


それで、この漫画を読んだ子供たちが、実際のバスケで(そういう言葉が無いと知らず)「フルドライブ」とか使い出したりしたら、ちとマズイ……。すでに兆候が見え始めています。


なので、必殺技は必殺技らしく、思いっきり中二っぽいネーミングや現実離れしたムーブにして欲しいですね。嘘をつくなら盛大に。いまいち区別の付きにくいのだと間違って広まる危険性があるので。


なぜこんなことを危惧しているのか

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って思われるかもしれません。しかし、見逃せない理由があるのです。以前、とあるバスケ漫画がきっかけで日本に間違った言葉が一気に広まってしまい、そのまま定着してしまった事例があるからです。
その、とあるバスケ漫画というのが現在、マガジンで連載中の「あひるの空」。この中に出てくるバスケ技術で「ダックイン」というものがあって、それが、まったく間違った使われ方をしていたのです。



ダックイン4
ダックイン3

ダックインは体の小さい主人公が使う技で、あひるが水にもぐるように低い姿勢でドリブルする技術だと説明されています。






ですが、本来のダックインは、ゴール下でディフェンダーを体を使って押さえ込みつつ、良いポジションでパスを受けるポストプレーのことを言うのです。


シール

絵を描いてみました。こんな感じです。主人公のような小さいプレーヤーが使う技なのではなく、むしろ体の大きなセンタープレーヤーが使う技だったというわけです。


あひるの空」は、バスケ漫画としては黒子のバスケと対極にある……リアルに描かれていると定評のある漫画です。しかもタイトル(あひる)に絡んだ技名。そのインパクトは絶大で、この用法がそのまま広まってしまいました。


……そして後に、黒子のバスケロウきゅーぶ!といった、バスケを扱った作品にも堂々と登場することになるのです。



ダックイン2

黒子のバスケ」14巻より…「バニッシングドライブ」の解説シーン。ナナメに動くダックインらしい。


ダックイン

ミニバスを題材にしたライトノベル、「ロウきゅーぶ!」1巻より…ダックインを「ドリブル技術」と書かいている。


作者が普通に間違えたのか、わかりつつも誤用したのかわかりませんが、こんなことが続くと、バスケ漫画によって日本バスケのガラパゴス化が進行してしまうのではないかと心配しています。世界では通じない日本独自の言葉がたくさん出てきてしまうのではないかと。


スクリーンアウト

screenout

そういえばスラムダンクでも気になるバスケ用語がありました。


スラムダンクは主人公桜木花道がリバウンダーだったという点が画期的な作品でした。桜木がリバウンドをとるための技術として身につけたのが「スクリーンアウト」。当然、この作品には「スクリーンアウト」という言葉が何度も出てきます。ただ、少なくとも私がNBAを見始めてからは(2000年以降)、現地実況がこの「スクリーンアウト(screen out)」という言葉を使っているのを一度も聞いたことがありません。向こうでは「ボックスアウト(box out)」と言われています。現在、日本でも一般的には「ボックスアウト」と言われていますが、いまだに「スクリーンアウト」と言っている人も少なくありません。やはり、スラムダンクの影響が大きいのだと思います。

スクリーンアウトアメリカでも使われていた言葉なのか?それならなぜ廃れて使われなくなったのか?それとも日本独自の言葉なのか?…正直よくわかりません。そこらへん詳しい方がいましたらぜひ教えてください。


バスケは漫画によって再発見されるスポーツ

ここまで漫画の影響を受けてしまう理由のひとつが「バスケの一般認知度が低さ」だと思います。バスケを知らない人はいないと思いますが、野球、サッカーに比べ日常的に試合を見ることは少なく、知っているようで知らないスポーツNo1だと思います。まわりにバスケを知っている人がいないため、バスケ用語は漫画で出てきたものをそのまま使ってしまうのだと思います。
あと、マイナースポーツの宿命なのですが、NHK-BSのNBAの日本語実況なども「知らない人向け」の実況になっていて、専門用語があまり出てきません。サッカーでは、実況解説でどんどん新しい言葉が出てきて、それが一般にも浸透してきてるのと対象的です。私も、周りにバスケを知っている人がおらずバスケ関連情報は海外のサイトなどから探してきてる状態です。


ということで多くの人にとって、漫画がバスケに触れる唯一の機会で、そこでバスケと言う競技が「再発見」されている…そんな状態なんじゃないかなと思います。黒子のバスケで「ゾーン」や「アンクルブレイク」などが脚光を浴びたりするのを見ると、バスケが再発見されてるんだなぁとほほえましく思いました。
本来ならバスケのプロ化が本格的に進むなり、日本人NBA選手が出るなりすれば、もっといろんな人に試合を見てもらえればいいんでしょうけど…。それもなかなか難しいと思うので、どんどん新しいバスケを題材にした作品が出てきて、いろんな人の目に触れてもらいたいなあと願っております。私もバスケ漫画をネタにしてバスケを語ったりしたいのでw


……ただ、漫画の影響力は絶大なので、できれば正しい用語の使い方をして欲しいです。ダックインの悲劇を繰り返すのは勘弁(´・ω・`)


……余談ですが

ロウきゅーぶで「イリーガルユースオブハンズ」が別の意味で捉えられていたのはウケましたw