黒子のバスケの「ミスディレクション」は割とバスケの本質を突いているのではないか?

黒子の得意技「ミスディレクション」について検証してみる

せっかく黒子のバスケのアニメが放送されている今、それに関連してバスケのことを語るチャンスなのに、まだ緑間のオールレンジ3Pにしか言及できてません。ということで今度は主人公の黒子の得意技「ミスディレクション(視線誘導)」について語ってみようと思います。
「ミスディレクション」は主人公である黒子が生まれ持った影の薄さに加え、視線誘導を行い、あたかも消えたようにコート上を動き回り、パスの軌道を変えてアシストするという技。オールレンジ3Pは検証の結果、不可能という結論だったけど(当たり前)、このミスディレクションはトンデモ技と結論付けるのは早計で、意外にバスケの本質をついているところがあるんじゃないかなぁ……と思うに至るという話です。


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バスケのディフェンス

まず、ミスディレクションの前提として、バスケのディフェンス話をしなくてはなりません。5 on 5における「マン・ツー・マン・ディフェンス」は、「1on1のディフェンス」とは別物です。バスケ漫画では「ボールを持っているプレーヤー(ボールマン)とディフェンスとの駆け引き」が全面に押し出されるため、ディフェンスでは一人が一人にしっかりはりつくものだと思われている方もいるかもしれませんが、実際はそうではありません。ボールマンには腕一個分くらい接近してディフェンスしますが(ワンアームとか言われてる)、それ以外のディフェンスはボールマンとマークマン(自分のディフェンス対象)の両方が見える位置に立っているんです。


例えば、極端な話になりますが5out(5人が3Pラインの外にいるオフェンス)で一人が一人にぴったりくっついていたらどうなるか…。一人がドリブル突破されたら、ゴール下はドフリーになって得点されてしまいます。

5o1



したがってこんなふうにドリブルで抜かれてもすぐにヘルプにいけるようなポジションに陣取っているんです。

5o2


詳しくは↓を見てみてください。
ボール非保持者に対する構え スキルアップのために|JXバスケットボールクリニック


……ということでバスケのディフェンスでは通常ボールマンとマークマンの両方を警戒している。だからボールマンに気を取られ過ぎたディフェンスからバックドア(死角)が生まれるというわけです。そしてバスケにはバックドアを意図的に発生させるオフェンスも存在します。


実際のバスケでのミスディレクションとは


昨シーズンNBAファイナルで印象に残ったセットオフェンス(あらかじめ動きが決められたオフェンス)の中から一つピックアップ。昨シーズンMVPのレブロン・ジェームスがダブル・ハイ・ピック&ロールを警戒したディフェンスの死角をついてカットし、ゴール下でボールをもらい押し込んだ…というプレー。



ダブル・ハイ・ピック&ロール

DPNR1

    • 3人で仕掛けるオフェンス。ボールマンへのディフェンス(D2)をスクリナー2人(O5とO4)で挟み込んで動けなくする。フリーになったボールマンはそのままゴールへアタックする。
    • しかもボールマンがNBAでも屈指のドリブラーであるドゥウェイン・ウェイド(O2)。フリーにすると何をするかわからない、黒子のバスケでいうと青峰みたいな選手……かな?
    • ドリブルによって攻め込まれる可能性が高く、なおかつ本来ゴール下を守る(D4)と(D5)が外におびき出されており、ウェイドのドライブを(D1)か(D3)でヘルプしないと簡単に得点されてしまう危険な状態にあります。


レブロン(O3)のディフェンスをしているターボ・セフォローシャ(D3)はヘルプできるポジションにつきますが、ダブル・ハイ・ピック&ロールはおとり。ドライブを警戒し過ぎたためセフォローシャはレブロンを完全に見失ってしまいます。

マークマンを見失う



気付いた時すでに遅し、レブロンは逆サイドにいるプレーヤー(O1)を経由してパスをもらい、ゴール下のパワープレーで得点しバスケットカウントもゲット!

ゴール下



図にしちゃうと凄い簡単なプレーに見えてしまうのですが、裏では色々な駆け引きがあるんです。
DPNR2



上手くディフェンスの死角をついてカットしたレブロンですが、黒子との違いはその比類なきフィニッシュ力。パスするのではなくそのままゴール下のシュートを決めてしまいます。ペリメーター(アウトサイド)のディフェンスが上手いセフォローシャも、センタークラスの体重(113kg)とパワーで押し込まれては対抗できません。
そう言えば黒子のバスケでもレブロンは「最強のプレーヤー」と説明されてましたね。 黒子のバスケの世界のレブロンはどんな化け物なんでしょうか?少なくともミスディレクション以外の技は全部使えるくらいで無いと納得できませんw それくらい現在のNBAでは最強のオールラウンダーなんですよね。


まとめ

ということで現実のバスケでも「ミスディレクション」はチームプレーという形で行われているという例でした。(ちなみにバスケには「ミスディレクション」という用語はありません、念のため)上記プレーなどを見ると、「ボクは影だ。でも影は光が強いほど濃くなり光の白さを際だたせる。」という黒子セリフにもあるような「パートナーとなる選手が強ければ強いほど黒子の能力は際立つ」という説明にはある程度の説得力があるんじゃないかなと思います。黒子の場合はその能力が強力すぎてトンデモになってるって感じですね。(長時間コート上全員の視界から消えるのは無理でしょうw)

バスケでは相手の視線や思惑の裏を突くってのが重要でそういう意味で「ミスディレクション」はバスケの本質をついてるところがあるんじゃないかなと思ったのでした。


おまけ

そういえば、黒子のバスケに関して、作者バスケやったことないだろ?とか、バスケをバカにしてるだろ?とかいう野次も見かけます。例えばイーグルアイ、ホークアイというポイントガードがコート全体を空から見渡すように把握できる能力が出てきて、これを非現実的とか中二wwwとか言うのを見かけました。確かに名称は中二じみてるかもしれません。しかし、バスケ選手のインタビューを見ていてもこれとおんなじこと言ってるんですよね。元日本代表のポイントガードの佐古選手は「空からコートを見降ろすようにイメージしてパスしている」とコメントしています。


なので割とバスケしてる方なんじゃないかなぁ…テニヌが完全にバトル漫画になってるのに比べたらw


ということで、作中に出てきた必殺技はすでにやってますシリーズ



アニメオンリーの人にはネタバレ含みますので注意!



青峰のバックボード裏からのシュート




青峰の上体をそらしながらのシュート

前述のドゥウェイン・ウェイドのプレー。バランスを崩しながらバックボード上の方を正確に狙っているのが凄いところ。




鉄心のバイスクロー




紫原のゴール破壊

あまりにも有名なシャックのゴール破壊。